2012年8月14日火曜日

書評『ワーク・シフト~孤独と貧困から自由になる働き方の未来図』リンダ・グラットン

ロンドン・ビジネススクール教授(経営組織論)が描く仕事・働き方の将来像。

前段にて職場環境を取り巻く変化(テクノロジーの進化、グローバル化の進展等)を概観し、後段でそれらの変化に対応し自由で創造的な働き方を実現するために必要な“シフト”を提案している。

前段はよくある話なので割愛して、今回は、題名ともなっている3つの“シフト”について紹介したい。

① ゼネラリストからスペシャリストへのシフト:
専門性の確立という考え方自体に新しさはないが、ここでは「連続スペシャリスト」という観点がポイント。
つまり、一つの分野にとどまらず、複数の分野で専門性を獲得しましょう、ということ。
なぜなら、リタイアまでのキャリアの期間の長さと環境変化の速さを考えると、特定分野の専門性が陳腐化する事態に備えることが望ましいから。

②競争から協力へのシフト:
どれだけ専門技能を磨いたとしても、大きなイノベーションを生む良い仕事をするには個人単独では限界がある。
そこで、知的資本(①の専門技能)と人間資本関係の組み合わせが今後ますます重要になるとして、人的ネットワークを3種類に分類。これがなかなか面白い。
(1)ポッセ(同じ志を持つ仲間):
アドバイスや支援を与え合える、信頼関係で結ばれた少人数の仲間。比較的専門分野が近い人とのネットワーク。

(2)ビッグアイデア・クラウド:
多様性に富んだ大規模なコミュニティで、自分の人的ネットワークの外側にいる人(イメージは、友達の友達)。
ポッセはある程度似たタイプの仲間になりがちという限界があり、それを克服して斬新な切り口のアイデアの源となるネットワーク。

(3)自己再生コミュニティ:
くつろいだ時間を共有できる、温かみのある人間関係。仕事の関係というよりも、かなりくだけた友人といったイメージか。

③消費から経験へのシフト:
ここが著者の最も伝えたいポイント。
給料の多さと消費の大きさに仕事の価値を置く考え方を脱却し、仕事を通した充実した経験を価値とする姿勢への転換。
例えば、それ程は稼げないけれど、大きな意義を感じられる仕事や家族と過ごす時間を確保できる働き方を選ぶとする。
それは同時に、選択の代償(広い家には住めなかったりする)を受け入れるということでもあるが、その勇気を持てるか。

本書が優れているのは、表面的なキャリア論・ノウハウではなく、仕事を働き方や人生の「選択」として明確に定義している点にあると思う。

格差の顕在化というテーマが頻繁に取り上げられることや相変わらず大企業志向が根強いことは、給料に代わる仕事の価値感が希薄なことが根底にあるのではないだろうか。

突き詰めてゆくと、豊かさとは何か、の様な哲学的なテーマになってしまうが、職業選択の切り口として本書のような考え方があることが、特に学生や若い人に対してもっとアナウンスされて欲しいと思う。

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