2012年6月20日水曜日

書評『それをお金で買いますか〜市場主義の限界』M.J.サンデル

ハーバード白熱教室でお馴染みのサンデル教授の新刊。

現代社会の隅々まで浸透した市場メカニズムに対して道徳の切り口からの問題提起。

経済学の観点からは、市場メカニズムは財の最も効率的な配分を実現する手段である。
ただ、通常の消費財から臓器に至るまであらゆる物が市場で取引される現在、本来は馴染まない生活領域にまで市場主義・商業主義が浸透している事に警鐘を鳴らす。

お金で買うべきでない物まで商品として扱う場合、その価値を貶める事になるし、買える人/買えない人の格差を拡げる事になると。
例えば、スタジアムの命名権は場の公共性を失わせるし、大学への多額の寄付により得られる入学権は不平等だ。

正義を論じた前作も同様だが、サンデル教授の本の素晴らしさは、具体的かつ本質的な問題提起を通して読者に考えるきっかけを与えてくれる点にあると思う。

MasterCardの広告に“お金で買えない価値がある”というキャッチコピーがあったが、本質を衝いていたなと今にして気付く。
お金で買えない故に価値がある、という意味だったのだと。

市場主義に最後に抗い得るのは規範・道徳といったものだとすると、アメリカには宗教・信仰や市民意識の様な軸がある気がするが、日本はどうか?

信仰(神道)は遠い昔に捨て去り共同体も崩壊した今、日本で規範と呼べる様な軸は世間の空気しかないようにも思える。

最後に本書最高の一節を。
“市場の問題は、実は我々がいかにして共に生きたいかという問題なのだ”

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